2023/02/25 18:11



2/25 追記:

今日まで開催だったtoogood archive shopに来てくださった皆様ありがとうございました。普段のオープンスタジオより多くの方にご来店いただけて嬉しい限りです。

今回の試みでは、toogoodの過去のコレクションを振り返ってブランドのアイデンティティをどのように確立していったかを見る事ができる試みでした。

特に001のコレクションを着た時の反応、002での振れ幅を体感していただく事で、toogoodの実験と取捨選択、特に生地においてどのようなバランスに落ち着いていくのかを考えられたのは、toogoodというブランドを考える上でとても重要でした。003や005で使われているウォッシュドシルクやマイクロスエードなどの生地に触っていただいた方の反応も良く、希少な枠を揃えた意義がありました。

数年分のアイテムを揃える事だけでしか見えてこない事もあるのは、ブランドのアーカイブを扱う身として肌で感じていた事で、それを共有できたのが良かったです。

そんなわけで結構好評だったので、少しだけ会期を延長します。


アポイントなしでのご来店が可能なのは3/3・4・5の14:00〜19:00。

2/27〜3/2まではアポイントいただければお店を開けますのでお気軽にご連絡ください。


どうぞ宜しくお願い致します。










今月のOPEN STUDIOでは普段と何か違うことをやってみようかと思い、自分がコレクションしてきたtoogoodのアーカイブアイテムを並べる事にしました。


2014年秋冬シーズンから始まったtoogoodは、1stコレクション(以下toogoodの表記に倣って001と記載)からドーバーストリートマーケットでインスタレーションを展開するなど注目を集めていました。デザイナーが姉妹の2人組で、姉のFayeは彫刻家・プロダクトやインテリアのデザイナー、妹のEricaがテーラー出身というバックグラウンドを持っています。

この彫刻家という要素はとても重要で、001はまさに洋服を彫刻と掛け合わせたものでした。生地は重く硬く、001で使用しているコットンキャンバスの密度は洋服として着れるギリギリです。しかしデザイナーの描いた線が堅牢に保たれたまま自分の身体の上に現れる様は異様でインパクトがあります。今回のアーカイブショップにも001のコットンキャンバスのオイルリガーコートを置いていますが、着ると自分が彫刻になったような気になる代物で、これは着ないと分からない感覚だと思います。実用性どうこうを気にする服じゃ無いこともすぐ分かりますが、それでも服としてのパターンが優れていないかというとそんな事はなく、オイルリガーやビーキーパーなどいくつかの型はその後のシーズンも作られ続けるほどの完成度がありました。

001の服は、動く立体物として服を考えるのではなく、身体の形を元にした固定された外形の中に空洞があり、そこに身体を入れたら服にも思えるというバランスです。言い方を変えれば、その空洞の中に入るなら誰が着ても形が保たれるということでもあります。

これは彫刻的というだけでなく、toogoodが初めから標榜している、新しいユニフォームを作るというブランドコンセプトを表す特徴だと思います。誰が着ても同じ形が出るパターンと生地のテンション。001の服は、実用性は高く無いもののこうしたコンセプトの極北を見せてくれるものでした。


002ではそれから一転してリネンを中心とした柔らかい生地のアイテムが多く、生地の質感もより表情豊かなものが出てきます。ドローイングをプリントしたものや手仕事でパーツを付けるといったアプローチで作られたアイテムもルックには数多く登場します。001が彫刻なら、002は工芸の領域に重なるコレクションです。生地が変わるので当然シルエットの印象も001とは大きく異なります。001と002のオイルリガーコートを両方持っていた時期がありましたが、着た時の印象は全くの別物でした。001は冒頭で触れた密度の高いコットンキャンバス、002はビンテージのような風合いのあるブルーのリネンだからというのもありますが、002のものは生地が柔らかすぎて、ブランドを確立した後のtoogoodを知っているからこそ、らしさに欠けると思いました。今は001の方のみを持っていますが、002が決して魅力がないという事では有りません。手仕事のもつテクスチャーが好きな人にはむしろ魅力的に見えるはずです。また、002は型のバリエーションが増えるのでパターンの変化を見る上では重要になります。後のドアマンコートに繋がるアイテムや、パンツのバリエーションも見えてきます。特に002のメッセンジャートラウザーは、アクロバットとティンカーの両方の要素を持っている貴重な型です。


また002から定番のフォトグラファージャケットも多くの生地で登場しますが、この時作られたバリエーションを3種類を今回のアーカイブショップに持ってきています。

ワックスコットン ・リネンとラミー・コーティングリネンの3種類ですが、後のシーズンで使われる生地を見るとやはり形の保たれる生地が多く、コーティングリネンが最も005からのtoogoodの印象に近いものでした。リネンとラミーの組み合わせの生地はその後登場しません。ワックスコットンのベースの生地も、003以降は002より硬く形の保たれるものに変わっていきます。004のものも生地は固めで、同じ春夏シーズンでも意図的に変えているのが分かります。この段階で、toogoodの取捨選択が見えてくるわけです。

005ではウールリネンの生地が登場しますが、これは002のリネン生地と比べてやや厚みがあり、身体のラインが出にくいものでした。柔らかく着心地はとても良いもので、やはり005は実用品としてのバランスが取れています。そして春夏・秋冬の違いはあれど、005の方がtoogoodの理想に近づいているように感じました。

002は001と別方向のアプローチのとても実験的なシーズンでした。002で使われた生地の多くはその後見る事はありませんでしたが、このシーズンがあった事で、toogoodのアイテムの中に度々出てくる手仕事を要する生産数が限られたアイテムなどを作れる振れ幅が広げられたと思います。顧客側に、それを受け入れる土壌が出来たことも大きな事で、001から005に最短距離でいっていたのでは持てない豊かさをtoogoodにもたらします。


僕はtoogoodのこれまでの過程を、001〜004が初期、005〜007が中期、008〜011が後期、012以降が現在のtoogoodという感覚で見ています。

自分で着る物は005・006が多く、コレクションしてるのは001・002が多いです。初期の実験的なシーズンがあったからこそ、005の豊かで完成度の高いバリエーションがある事を知っているので、初期のものに価値があり、その恩恵を受けられるのが005という事です。

プロダクトとしてのバランスの良さや完成度は004・005・006でグラデーションはあるものの、LAMBSWOOL FELTやWAXED COTTON 、COTTON CALICOなどの定番の生地のものはここでクオリティが定まります。

初期なら資料として価値があるならなんでも欲しいです。中期は実際に着る物を中心に完成度のあるものをピンポイントで選ぶところ、後期はデザイン性の強いものに特化して集めています。

今回のアーカイブショップでは、こうした視点を頭に入れながら見ていただくとより解像度高くお楽しみいただけると思います。

002以降のそれぞれのシーズンの特徴に関してはぜひ店頭でご説明させてください。


皆様のご来店をお待ちしております。


toogood archive shop

2/18・23・25  14:00〜19:00

2/19・22  15:00〜20:00