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2021/07/02 08:44

LAYYERを始めてから4ヶ月が経過しました。


お店というよりは複合プロジェクトのような形で、予想もつかなかった展開をしていることに自分でも驚いています。

本当に、色々なことを考えながらやれている。実践や創作と一緒にやっていられる。支えてくれている方々にはとても感謝してます。もっと面白いものを作るので、今後とも宜しくお願いします。



この4ヶ月で大きかったのはエディトリアルワークをやった事。何とロシアのディレクターが声をかけてくれて雑誌掲載もされました。




見つけてくれた事はもちろん、ちゃんと探してる人がいる事自体嬉しかったです。そんな事ある?ってスピード感で現実味も後から湧いてきました。今月は撮影出来なかったので、7・8月にもまた撮影して、良いものが撮れたらまた載せて貰えるかもしれません。

物撮りももっとやって、写真が溜まってきたらZINEを作れたら良いなと思ってます。


エディトリアルワークの面白いところは、LAYYERというチームでの表現になってることや、撮影やスタイリングを通してファッションについて考える時間が得られる点。



売上や宣伝のための制作だったり、その効果を数字で測るのではなく、ファッションシューティング自体をやりたい僕だからできる事だと思います。

言い方は難しいですが、僕の中でファッションシューティングと巷に溢れてるスタイリングって明確に分かれていて、他の人はそもそもその差を自覚してないと思うのです。

加えて僕のスタイリングの組み方は我流だし、影響を受けたのも海外の雑誌の中でも尖ったものなので日本のスタイリストとは全然違うルールでやってる節があります。




今日はちょっとだけその解説を。

例として初めの撮影の中でも上手くいったと思ってるこのスタイリングを使います。


使ってる服のキャプションは以前の投稿に出てますが、コートがベレッタ。中にイッセイの最初期のプリーツ、ルドヴィックとサンスペルのコラボニット。ドリスのスウェットパンツ、ネヘラのイヤリングという組み合わせ。




このスタイリングをどう考えたかというと、僕はベレッタが好きで、特にこの日本画のプリントが施されたコートはお気に入りでした。シルエットは着物風、それに大きな襟がつき、デザインも時代を感じれます。ベレッタは80年代に活躍したデザイナーで、特にコートを得意とし、彫刻的なシルエットが印象に残ります。

彼女はとあるインタビューで、コートは体の1番外側に位置し、それは時に鎧のように機能すると言っています。「私のコートを着た女性たちは男性社会の中で様々な視線に晒されるから、それを跳ね除け彼女たちを守るために大胆なシルエット、大きな肩、男性には無いくびれといった要素の強調が必要だった。」「顧客の女性を、私は母的な目線で見る事がある」と。こうした意識を持ったデザイナーの服であるという事がスタイリングのインスピレーションになります。


次の操作で、じゃあ今の社会でベレッタのコートを必要とするのはどういう人なんだろうか。といった問いを立てます。今でも女性の社会進出は問題ではあるけれど、より現代的なのはLGBTQ+問題では?とか考えるわけです。

そこでルドヴィックを持ってきます。ルドヴィックは若手がゆえとても現代的で、「Gender fluid」というテーマを持っています。ブランドの出しているイメージはセクシャリティに関わるものが多く、身体のラインを出せるデザインが中心です。


今回使ってるのは高級Tシャツなどの肌着・下着のメーカーとして知られるサンスペルとのコラボのコットンニットで、やはり身体のラインが出るアイテム。丈も短く肌が露出します。ショーでは男性・女性のモデル両方がこの型を着ていました。


ドリスは言わずもがな、ゲイファッションの文脈を持っているのですが、それだけでなくアイテムがスウェットパンツです。ワイド型でともすればスカートのように見えます。

このパンツと組み合わせる事で、ルドヴィックのニットもゲイファッションの印象に強く寄ってしまうのでなく、どちらかと言えば内的な印象にしてプライベート性を高めてます。


今はLGBTのモデルが活躍しているのをよく見ます。それは良い事なんだけど、僕がやりたいのはそこまで政治的にナイーブなものではありません。かといってこのスタイリングに性差を感じさせる要素が少ないかというと、そんな事はなくて。男性性・女性性が個別のパーツにちゃんと出てないと、そもそもジェンダーレスな表現は成り立たないので。ユニセックスはそもそも性差を感じさせる要素が無い服になりがちで、それとの差別化が必要だから、こういう表現になったんだなとも思います。


今回のモデルは元々中性的な子ですが、ちゃんと男性性・女性性の両方を組み込む事によって、性別がどちらか読めない魅力というのを作り出したかったわけです。

LGBTQ+の問題の核は、自分で自分の性別が分からないという戸惑いの中にこそあるなと思うので、その状態のまま美しいものを作りたかった。

見える角度や距離で印象が異なり、少し非現実的な存在感がでるように。

イッセイを挟んだのもその辺が関わってます。ちなみにドリスのスウェットパンツで隠してますが、履いているのはかなり高いウェッジソールのブーツです。


このスタイリングは複雑なので、今書いたような事がどこまで伝わるかは別にどうでも良いなと思ってます。アパレル業界にいる人だから分かるという話でも無いですし。

大事なのは目の前にあるスタイリングの美しさが、どういう種類の要素で出来ているかに敏感である事で。美しさを作るために考えるという行為がもっとあれば良いなと思ってます。


それではまた。